内憂2023・・・の巻

昨年末、インスタグラムにアップした内容と重複しますが、年頭にあたって「内憂」という言葉が我が祖国にまとわりついているように思われてなりません。
画像は、ショスタコービチの交響曲第8番のスコア。
この演奏時間およそ1時間に及ぶ大曲は、俗に「戦争交響曲」とも呼ばれています。冒頭からすでに不安感に満ちた楽想が繰り広げられてゆきますが、ソナタ形式をベースにした第1楽章の展開部は、いままさに迫りくる戦争の実像と恐怖とが音楽によって描き出されているように感じられます。

この上の楽譜はその展開部導入後ほどなく現れる箇所を大譜表にしたものです。不協和な響きと低弦で刻まれるリズムが、やがて大きなうねりとなって世界を席捲してゆく。ショスタコービチの諸作品のなかでも、とりわけ傑作に部類できるのではないかと考えています。
●ショスタコービチ交響曲第8番第1楽章展開部から
ひとつ前に作曲された交響曲第7番は「レニングラード」の副題を持ち、ナチスドイツに包囲され、生活物資も絶たれるなかに完成し、ナチスによる総攻撃が予告されるなか催された演奏会は、市民や前線の兵士をも勇気づけたと伝えられています。

しかし、同時にショスタコービチが音楽に託したのは内憂に対する抵抗だったことは、注目すべき事実ではないでしょうか。それは7番につづくこの8番にも込められているに違いありません。
ときはスターリン時代。ショスタコービチは、ほかならぬ祖国にもまた本当の敵が顕在していることを確実に見抜いていたのです。
そしていままた、その内憂という言葉が、無視できない存在となっているように感じてなりません。ほかならぬ我が祖国において……。

この交響曲第8番のラストは、ハ長調の主和音、すなわち「CEG(ドミソ)」の透き通った和声に収斂され、遠く消えゆくように閉じられてゆきます。そこでそこはかとなく第3音(E=ミ)が、やさしさとともにその後に続く世界を予言しているかのような効果をもたらしています。そこに託された作曲者の本当の思いを感じ取れるような気がしてなりません。
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