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2022.08.29

民主主義は“面倒”だ?・・・の巻


  本題に入る前に、たまたま目に止まった新聞社の配信記事を1本リンク。

  広がるウクライナ避難者支援、その陰で… 失意の中、危険覚悟で日本を去った男性(神戸新聞2022年5月10日配信)

  リンク記事は、度重なる逮捕や拷問など、自国政府からの迫害を受けたウガンダ人男性をめぐるリポートである。「民主主義の国」に期待を抱き来日したこの男性は、難民申請をした入管でそのまま拘束され、半年以上にわたり拘束されていたというのだ。なんでも、迫害の証拠として提出した写真や新聞記事等が「ニセモノ」と決めつけられたらしい。

  その後「仮放免」され、日本国から若干の生活費が支給されていたというのだが、今年になって、身の危険を承知で祖国に帰国したという。リポートはこう証言する。

>男性が来日した19年、日本では1万375件の難民申請があったが、認定されたのは44件、認定率は0.4%。先進国の中でも極端に低い。
  そして、今般のウクライナ難民との処遇の差についても疑問を呈している。

  詳しくはリンク記事をお読みいただきたいが、こうした「差別」の根幹はなんなのか。ひょっとすると件のウガンダ人男性がかの地で反政府側にあったのかとも疑いたくなるが、難民申請をめぐる「実績」を見れば必ずしもそうではなさそうに思える。
  オレの勝手な思い込みにすぎないが、日本国にとって有利な宣伝材料(宣伝相手には日本国民の含まれる)となるウクライナ難民とそうでないほか多数の難民申請者という差別がそこにありはしまいか? 

>今、日本はウクライナ人のサポートをしているが、戦争が終われば『帰りなさい』と言い出すのではないか。(リンク記事)

  という疑いのこもったウガンダ人男性の言葉が的を得ている可能性を、オレは否定できない。もしそのとおりだとすれば、こんなに恥ずかしい国(それも一応は「先進国」とされている)がほかにどれほどあろうかと情けない気持ちになってくる……。

  話かわりますけど。 近ごろ凝っている高野秀行の著作のひとつに『極楽タイ暮らし』(ワニ文庫・2000年)がある。大学卒業後に日本語講師としてチェンマイ大学に赴任した著者が、その後の体験や見聞なども交えつつ、その暮らしやタイ社会やタイ人をめぐるさまざまな所感などを綴ったものだ。

  国や地域を問わず──そのなかにはもちろん日本も含まれている──「国民性」だの「文化」だのを捉えて論評などをした著作はケーセッキ安倍の悪業ほどあるが、その多くはごく限られた材料に頼った思い込みに過ぎなかったり、もっとひどいところでは単なるペテンだったりすることもママある。一方で、面白く読める本も多いけれど、「ちょっとこれは単純化しすぎてないか?」「書かれてることとまったく逆のことがいくらでもあるぞ」など疑問が積み重なることも多い。

  ──ごく私的な場でのデマカセや軽いジョークやイヤミの類はともかくとして、少なくとも、オレ自身はほんの少しだけ韓国だのタイだのの経験があるからといって、韓国人はどうだのタイという国はどうだのといった論評をしかつめらしくする気にはとてもなれない(もちろん、ちょっとした感想や出来事などをめぐる所感程度のことは記すが)。どっかの本にあるように外国のことなんぞ「わからない」というのが本音だからだ(とはいえ、「わからない」で投げ出してしまうのもどうかと思うので、自分のなかではあれこれ思案してみたりもする)。

  そんなことを勝手に思っているなか、本書はじつに面白く、有意義に読めた。読後も枕元文庫の仲間入りをし、ベッドのなかでときどき適当に開いては読みふけっていたりする。著者自身の謙虚な姿勢と旺盛な冒険心、さらに小気味のいいユーモアセンス。本書に限らず、高野本は本当に面白い──珍しく複数(といっても4~5人だが)の友人に「読んだか? 読んでない? 面白いゾ!」などとオススメしているほどなのであった。

  ・・・・と高野秀行とその著作をめぐる雑感については別の機会に改める。今回取り上げた本書に、(たぶん)著者の思いとは別の視点で興味を引いた箇所があり、単にそこを取り上げたいと思ったのであった。

  本書は40編のエッセイと4本のコラムからなっているが、今回取り上げるのは「タイ人の愛国心はあるか?」というやや生臭いタイトルのエッセイである。そのなかにこんな記述があるのだ。長くなるがそのまま引用する。

>タイは、日本や他のアジア諸国同様、長くて深刻な不景気の状態にある。会社はどんどん潰れ、多くの人がリストラされたり、破産したりしている。ところが、こういう状況下でも儲けている人間はすごく儲けており、日本への観光ツアーにやってきては、買い物をしまくるという。日本に住んでいる彼女はときどきその通訳兼ガイドをする。
「そういう人たちってすごいんですよ」と彼女は言う。すごいのは不況下でお金をたくさん持っていということではない。「あの人たちは、今の不況がもっともっと長引けばいいと思っているんです」
  いったいどういうことか。彼女によれば、彼らは、タイ・バーツの下落により商売が逆にうまくいっている輸出業者だったりするのであり、景気が回復すると、バーツの価値が上がり、商売のうまみが減る。ライバルもたくさん現れるので困る。だから、今の状態がいい。
  それだけではない。彼らは日本に来て、日本の発展ぶりを目の当たりにする。しかし、それを羨ましいとはかならずしも思わないのだという。なぜなら、みんなが豊かになったら、物価が上がる。人件費も上がるから、従業員の賃金もかさむし、民主的な考え方が広がったら賃金闘争や労働条件の改善を訴えられたりする。(249~250ページ)

  鋭い方はもうお気づきなのに違いない。ここでは日本で暮らすタイ人女性の話として著者が綴っている「タイ人」の姿の例なのだが、これがあてはまる日本人もかなりの数にのぼるのではないかと思うのだ。むしろ日本を映す鏡だ。

  とりわけオレが着目したのは、「民主的な考え方が広がったら賃金闘争や労働条件の改善を訴えられたりする」というくだりである。それこそが財界や自民党らの本音──もちろん、そうでない人物や組織もあろうが──なのではないのか? 

  おそらく、同じセンスは習近平だの北朝鮮のふとっちょなどにも共通するんじゃないかと思うが、そんな連中よりも自民党幹部だの「アベトモ」だののツラを思い浮かべるほうが、祖国や自分のためというものである。

  本書では、こうした点について日本との比較を(おそらくは「あえて」)避け、本稿もある種のユーモアまじりで巧みに締めくくっている。しかし、書かれてから二十余年が経ち、著者が内心でどのような所感を抱いているのか、興味のわくところではある。


 

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