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2022.07.18

涅槃もどき・・・の巻

Butan02
  だいぶ古い本になるが、最近になって読んだ『秘境ブータン』(中尾佐助/岩波現代文庫・初出1959年)に時空を超えたナイスな皮肉が書かれてあったので以下に引用してみることにした。
(以下、前掲書42~43ページから引用)

> アッサムを結ぶ国有鉄道のマル・バザールの駅に着いたのはまだ七時前の雨の中だった。私達はうす暗い駅長室でランプをふけて朝食をとって列車を待ったが、定刻八時になっても列車の音さえしなかった。インドの汽車旅行はいつもこれだ。ただもう待つ以外の方法はない。どこで列車がどうなり、何時間おくれるのか、一切通信はない。たくさんのインドジンは何事もないように悠然として待っていて、怒っているものは一人もいない。彼らは時間や年月を超越しているのだろうか。インド人の考え方を哲学的に考察して、このような結論を出したのを私は読んだことがある。しかし私がインド人のインテリと、汽車を黙って待っていることについて話しあってみると、彼らは時間を超越しているので平然としているのではなく、どうすることもできないのであきらめているだけだ。「インドの鉄道はホープレスだ」 改善の希望のないところで、改善のための努力がないのは当然だ。(中略)日本のもう一つの国有企業であった電話をとってみると、その新設が普通の日本人にとって「ホープレス」になったまま、いつ自由に家庭に電話がつけられるか見当もつかないままだ。電話の新設申し込みが、十年以上待っても、つかないことは普通だ。それで日本人は電話の不自由のため郵政大臣の辞職をせまることなく、平然としているのだから、これも外国人から見たら、インド人が平然といつ着くともわかない列車の到着を待っているのと同じことだろう。
(引用ここまで。太字は引用者による)

「インド人のインテリ」(単体? 複数人?)というサンプリングが適当かつ十全かという問題や、オレ自身にとっても日本の電話云々が「本当にそんなザマだったのか?」と当時のことが理解しがたいという点はあるにせよ、この比較が面白い見方であることに変わりはないと思う。

 ところで本書。
 以前にブータンをかじってみたいとネットで書籍を調べてみたことがあるが、出てきたのは「幸せの国」がどうのというステロタイプの内容ばかりでガッカリしたことがあった。その後、本書など数冊の良著と出会えたのだが、ぜひ一読をおすすめしたい一冊である。


 

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