自滅ゆき超特急に乗るのはだれか(前編)・・・の巻

とあるィ夜。ふと庭を窺うとコムギがカブトムシと格闘していた……。
すぐさま没収。1年に1匹ぐらいカブトムシがわが家にお出ましになるが、オスが現われたのははじめてかもしれない。「たぶん子どものころ以来だろうなァ」と手で感触を楽しみつつ、網戸の表に掴まらせて逃がしてやった。
そんなヒメ親子。目下、日中のお気に入りは玄関。ようはいくらか床が冷たいからってことのようだ。
さすがにおチビだけが元気一杯。ももたんだけは家族から離れネコ部屋(という名の物置部屋)の奥で寝ていたりするのだが。
クルミちゃん。ももたんと同様に7月生まれ組のなかで紅一点である。
そらちゃん。柄が同系統だからってワケでもないんだろうけど、ユメによく懐いている。
家族7匹、みんななかよしо(^ヮ^)о
仕事部屋の窓には例年どおりヤモリが陣取っている。ときおり手を休めて観察していると、けっこう食欲が旺盛で、小さな羽虫をどんどん平らげている。ちなみに、ヤモリってのはあれで触り心地がとってもイイ。
話かわりますけど。
「これほど愚かなプロジェクトは見たことがありません」(「しんぶん赤旗」2020年8月24日)
愚かなプロジェクトとは、JR東海が進めているリニア中央新幹線計画を指す。かなり手厳しく語ったのは本書『必要か、リニア新幹線』(岩波書店)の著者、橋山禮治郎氏である。
橋山氏は日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)の調査部長や政府運輸政策審議会委員、日本道路公団経営問題研究会委員、首都圏空港問題検討調査委員会委員などを歴任してきたキャリアの持ち主で、公共計画や経済政策などの専門家である(米アラバマ大学名誉教授)。最初に引用したコメントは、ちょうど本書を読んでいるさなかに掲載されたインタビュー記事のなかで発せられており、ちょうどいいタイミングでドンピシャな記事が出たものだなと思ったものだ。
リニア中央新幹線計画の概要については報道も多いので割愛するが、最大のセールスポイトは最高時速500kmの超の高速地上交通機関ということであろう。まず2027年度に品川~名古屋間を開業させ同区間を最速で40分、2045年には大阪まで延伸開業させ、品川~大阪間を同じく67分で結ぶ計画とされている。大阪延伸までの総工費は9兆300億円(建設単価206億円/km)との事業主からの発表だ。
工事やそれに先立つ調査などはすでに進められている。同時に、多方面における問題点や疑問点が浮上し指摘されている──それらに対しJR東海はマトモに応えていないが──。早くも訴訟すら起きているが、それについては次回アップでふれたい。
本書では、数々の公共事業に関わった著者が、専門家の目線でリニア計画の現状と未来とを探っている。さきの新聞の引用ではすでに「反対」の意を表明しているが、本書(2011年2月発売)には『一義的に「賛成」とか「反対」を主張することを意図したものではない』(はじめに)としており、実際それに沿った内容になっている。しかし、それだけに読み進めてゆくと戦慄が走るのを禁じ得なかった。
まず安全性が具体的かつ十全に担保されているとは言い難い。建設ルートには国立公園を擁する広大な南アルプスを貫通する長大トンネルなどが含まれているが、環境保全面での具体的検討が甚だ不十分。具体性に乏しく楽観的ともいえる需要予測。一民間企業としても、世界中の鉄道プロジェクトとしても例のない規模の建設予算とその楽観的な調達・返済計画。そして、どこのだれがその必要性を熱望──多大にすぎる予算を投じ、自然環境を無視した建設を強硬してまで──しているのかがほとんど見えてこない頓珍漢ぶり。etc......
環境面については次回に譲るが、ここに長大トンネルとあるのは安全性という点で極めて重要だ。JR東海では、万が一トンネル内(路線の大半がトンネルだが)で事故など異常が発生した場合でも、十分な避難設備を設ける旨の説明をしている。しかし、運転士さえ乗務しない乗り物にあって、1編成最大1000人規模の乗客を速やかに避難させることなど、本当に可能なのだろうかと思う。
旅客機の緊急脱出の実際および訓練と比較されたい。
長大トンネル内や大深度地下における事故時の速やかな避難・脱出を想定しているならば、エアラインと同レベルの客室乗務員の乗務が必須となるのではないか? 仮に現行のフル新幹線車両程度の旅客定員であれば1両あたり4名は必須と考えられる。10両編成ならば40人だ。しかも単なる接客要員ではなく、エアラインの乗務員がそうであるように、日常からの訓練や大規模な専用施設を用いたより実践的な訓練を受けていなくては乗務する意味はない。当然それらのコストは運賃に反映せざるをえない。
残念ながらこうした見方についての指摘は本書ではなされていないが、オレはどうもリニアに限らず日本の鉄道全般における“穴”のように見えてならない(日本の新幹線の安全実績が優秀であることは誇りにすら思うが、ごく身近なところではホームからの転落事故が頻繁に起きている)。
需要予測という点で必ず槍玉にあがるのが、名古屋までの暫定営業中に、はたしてどれだけの利用者がいるのかいうことである。東京~名古屋間やその周辺地域との単純往復利用者は十分に考えられるが、大阪やその先への乗客がわざわざ大深度地下の品川と名古屋で乗り換えてまでリニアを利用するのだろうかと著者も指摘している(くわえて、計画されている途中駅にどれだけの利用者がいるのだろうか。現状でも安中榛名やいわて沼宮内、奥津軽いまべつなどはどうか?)。
コレはオレの想像だが、リニア開業の暁に、JR東海は東京~名古屋間の速達列車(現行では「のぞみ」)を全廃ないし激減させる可能性があるように思えてならない。そうなれば、「のぞみ」のすべてないし大半は名古屋発着(西方面)となり、否応無しにリニアとの乗り継ぎを強いられることはなってしまう(名古屋駅の新幹線ホームが2面4線と限られているのがネックだが、あの絶妙なダイヤづくりから想像するに、運用は可能なのではないか?)。
需要について、著者はコンコルドの失敗を教訓として挙げている。仮にリニアがコンコルドと同じ運命となった場合、わが国の経済損失(ダメージ)は、コンコルドどころではないだろう。ヘタをするとJR東海とともに国家・国民が心中させれるハメになりかねない──企業の信頼喪失と経営危機、回復不可能な自然破壊、無駄な税金投入等(本書82ページ)──。
くわえて、計画どおりに進んだとして全通する2035年がどうなっているかもわからない。本書で指摘されていることのひとつに、中国における高速鉄道がある。すでに試験運行では時速487・3km(リニアではなく新幹線と同じ粘着式鉄道)を記録し、リニアの営業速度に迫っている。
鉄道以外で見ると、日本での開発が半ば頓挫している国産ジェット旅客機MRJとほぼ同性能を持つARJがすでに中国で実用化され定期便で運用されている。ボーイング社のジム マクナニー会長が「中国メーカーが世界レベルの航空機製造業界で競争するにはまだ十年かかる」(『乗ってはいけない航空会社』杉江弘/双葉社/2016年10月)と語ったいう話もあるが、言い換えるといずれは世界レベルに中国が達するだろうという予測であり、これは高速鉄道にも当てはまる可能性がある。それもリニアが全通するという2035年までに。仮にそうなったら(いや、ならなくても?)、時代遅れかつ膨大なカネとエネルギーがかかる乗り物を日本が持て余すことになりかねないワケだ。
その中国はドイツが開発・実用を国として中止したリニア(日本とは異なる「常電導磁気浮上方式」)を上海で開業させたものの、電磁波による健康不安の指摘などから計画していた延伸が中止している。つまり、いまやJR東海と周辺の利害関係者ぐらいしか求めていないのがリニアという言い方だってできるかもしれないのだ(ついでに。ドイツ方式は日本方式と比べ振動や騒音の大きさが目立つというが、上海で乗った感想は、乗り心地の点で長時間は乗っていられないなというものだった。また時速300km程度であれば快適性はあったものの、当時の最高速度・時速430kmレベルになると揺れや振動が酷く、シートベルトが必要なのではないかという気もした)。
そんなネガティブな予測ばかり言うなと思われるかもしれないが、世界に類を見ない巨大鉄道プロジェクトだからこそ、最悪の事態までを見据えて具体的かつ綿密な計画を立てなければならないことを本書では指摘している。しかも必ずしもリニアでなければならないという話でもないのである。高速鉄道の拡充はいい。しかしなぜリニアに固執しなければならないのか?
最後に著者は指摘する。
>計画者は、なぜこれだけ問題が多く、また不確実性が高い超電導磁気浮上方式リニア鉄道の実用化に固執するのか、筆者にはまだ十分に理解できません。
それにつづくつぎの指摘。
>失敗に終わる可能性もあるということです。しかし、失敗は事業者、国民、国によって取り返しのつかない損失になりますので、絶対あってはならないことです。(あとがき)
そう。失敗が絶対にあってはならないレベルの巨大事業だということを忘れてはならない。
次回は建設予定地などで起きている諸問題について触れてみたい。
| 固定リンク


コメント