恐怖の“羽田アプローチ”誕生か?・・・の巻
タイ散歩の話の最中ですが、今週はちょっとひと休みをしつつ書評を兼ねて物騒な話題を書き連ねてみたい(「緊急出版!」を発売日に読んだので、緊急アップをすることにしました)。
本題の前に……。「新型コロナウィルス」騒動でマスコミは持ちきりである。シロウト目にみて、感染力をはじめとする影響が無視できないレベルと思われる新興感染症であり、ホットなトピックであることには間違いないと思う。
そんななかひとつ思うのは、わが国はもちろん世界中のありとあらゆる国と地域とが、こうした新興感染症対策という点で試されているということである。
思い出していただきたいが、少し前に「新型インフルエンザ」の危機が叫ばれた。マスコミもこぞって取り上げ、わが国をはじめ諸外国における対策状況などを次々と報じた。そうしたマスコミの指向はいつの間にか収縮しているように見受けているが、今回の「新型コロナウィルス」は、まさにその「新型インフルエンザ」に対して取ったであろう対策や準備、訓練などがどれだけ実際の場面で生かせているのかという、いわば「試験」を人類が受けさせられているとの解釈もできる。
類似性のあるウィルス感染症である。エボラ出血熱やエイズとは異なり、飛沫や患者らとのごく軽度の接触などによって感染しうる(らしい)という点も今回の疾病とインフルエンザとは共通している。そういう点だけを見ても、対策には共通点が多いハズで、もしこの期に及んで十分な指針が示されていないのであれば、あの「新型インフルエンザ」騒ぎはいったいなんだったのかということになってしまう。言い換えれば、音頭を取るばかりでなんの実も結んでいなかったということではないのか……。
この点で、はたしてどれだけの国と地域とが「合格点」レベルに達しているのか。そういう視点を含め、今後を窺っていきたいと考えている。
(それにして、も。毎日のようにテレビニュースなどで「新たな感染者・患者発生」が伝えられるが、インフルエンザや「風邪」と比較してその感染力はどうなのだろうか?)
閑話休題。
今回の主役『パイロットは知っている 羽田増便・都心低空飛行が危険なこれだけの理由』(杉江弘・山口宏弥/合同出版)である。
羽田空港(東京国際空港)の離発着便を大幅に増やすという指針が日本政府から示されている。売り文句としては、成田空港と異なり都心真っただ中といっていい立地条件や、国内線との乗り継ぎの利便性などが取り上げられている。しかし、実際に増便をはかるとなるとクリアすべき課題が多い。限られた滑走路など空港そのもののキャパシティもそうだが、空港のアプローチなどにも大幅な変更が取り沙汰されており、いままさに国家レベルでの重要な岐路にあるといっていい。
実際に今年の「夏ダイヤ」から「都心低空飛行ルート」の採用を日本政府が示しており、1月末から前段階の試験運用実施に踏切っている。
そのポイントのひとつに着陸進入角度の変更がある。世界のスタンダードである3・0度に対し約3・5度(3・45度)で滑走路に進入させるというのだ。「たった0・5度」とシロウト目には思うが、著者(ともに元・日本航空機長)によれば「ジェットコースターのような急角度」であり、尋常な要求でないことを窺わせる。
「そんな大袈裟な」
と思われるかもしれない。いまひとつその0・5度をめぐる証言を紹介しよう。
>~通常の着陸進入角度は3度である。自分で軽飛行機を操縦してアメリカのロングビーチ空港のランウェイ25Lに降りたときのことだが(中略)。実はその滑走路の進入角度は3・5度で通常より0・5度だけ急だったのだが、わずか0・5度でもだいぶ感覚は違うものだと思った。(『ビックリ飛行機でゆく世界紀行』チャーリィ古庄/イカロス出版)
これがどれだけ危険を孕むか? デルタ航空(米国)とは先の試験への参加を拒否し、エアカナダ(カナダ)は試験初日の羽田到着便を成田発着に振り替えた(ただし、2日目以降は羽田に到着)。ちなみに、デルタ航空は全便を成田から羽田に移す決定をしているなかでの動きであった。
そんな急角度進入を、こともあろうか世界屈指の過密都市である東京都心上空、それも(天候により差はあるが)急旋回を伴う低空飛行と合わせ実施させようとしているのだから恐ろしい。
本書巻頭には地域別の「新飛行ルート」図が掲載されている。それによれば、品川付近で1000フィート(約900メートル)、渋谷付近で2500フィート(約750メートル)、新宿副都心付近で約3000フィート(約900メートル)などとなっている。さらに、石油コンビナートなどが集まる「川崎コンビナート」付近では約500フィート(約150メートル)から約3000フィート(約900メートル程度)という身の毛のよだつような数字が示されているのだ。
■AからZまでデタラメな国に?
>国交省では、国内では稚内空港と広島空港、外国ではサンディエゴ空港など20空港で降下角3・5度の例があると強調しています。(本書62ページ)
ところが、(国交省が例として挙げた)稚内や広島と羽田とでは計器進入方式が異なるばかりか、3・5度は進入途中の一時的なものだという。また、
>サンディエゴ空港は、デルタ航空のパイロットによれば、大型機は飛来せず、進入域には人口密集地がなく、しかも実際には有視界飛行で降下角3.0度で進入していると証言しています。(同)
という。つまり日本政府は、
>ローカル空港であったり、別の進入方式であったり、大型機の飛来しない空港を例に「羽田でも(3・5度で)大丈夫」と主張(以下略。同)
しているわけだ。
念のため、急角度の実例をいまひとつ挙げておこう(国交省の件のリストには入っているのかな?)。
先に引用した『ビックリ飛行機でゆく~』では、ロンドンのロンドンシティ空港で実施されている5・5度という例を紹介している。ロンドンシティ空港はロンドンの5カ所ある空港のうち中心地にもっとも近いが、滑走路はわずか1500メートルという小規模な飛行場で、発着機はERJなどのコミューター機が中心(「フライトレーダー24」で確認)だ。ターミナルビルは地方空港程度の規模である。ボーイング777などの大型機が頻繁に発着する羽田とはまったく異なることがおわかりいただけるだろう。
さしあたり1例だけを取り上げたが、本書にはこのほかにも欺瞞にみちた「説明」をゴリ押しするわが国政府のデタラメぶりが余すことなく暴露されている。面白いので(?)もうひとつ引用しよう。
計画を受け、航空機からの氷塊の落下を懸念する声が周辺住民らから挙がった。それに対する国交省係員の回答(本書によれば「高圧的に」)。
>「氷が格納されるというエビデンスというのはどこにあるんですか? 我々は航空会社からは300~400キロで離陸するので、そこの氷は格納されず、氷は全部落ちていくと聞いています」(本書38ページ)
それに対する本書の回答。
>これは完全に間違った説明で、我々パイロットはそのような理屈は聞いたことがなく、(中略)格納スペースに雪が入って上空で氷になるのは常識で、着陸後に中を見ると氷がいくつも付着しているのも目にします。(同)
これらのやりとりについて、著者はつぎのように鋭い指摘をしている。
この件にとどまらず、住民説明会での係員の説明は、国交省が公式に述べていない、事実に反する内容がほとんどで、注意が必要です。国交省がマンツーマンの説明方式にこだわるのは、このように他の参加者に聞かれることなく平気で嘘の説明ができるからではないか、という疑念すら浮かびます。(同)
詳しくは本書をお読みいただきたいが、たしかに驚くべき、また呆れると同時に暗澹たる気持ちにすらさせられるウソと誤魔化しに明け暮れているのが、残念ながらわが国政府のようだ(ついでにいえばこんなところで「エビデンス」なんてヨコモジを使うなよ、イナカモン・笑。しかもご指摘の「エビデンス」ならいくらでもあるということも知らなかった?クセに)。
んっ? なるほどなるほど。あのケーセッキアベなんていうデタラメをヘタクソな絵に描いたような男が“リーダー”として居座り続けている国である。あの不真面目かつ不遜極まる国会答弁と、本書で報告されている国の遣り口はまさに一心同体。そう納得せざるをえない。世界のみなさん、コレがいまのニッポンでございます。まぁ、たしかに「ニッポンすごい!」だわな(笑)。
■無謀な計画の陰に米軍と家畜人行政あり
さて、ではなぜ3・5度もとい3・45度などという降下角が浮上したのであろうか。
じつは「横田空域」がその主因とみられるという。「横田空域」とは簡単にいえばわが国領空を外国の軍隊である米軍が占領している空の植民地。一部は解除されたものの、日本の航空法すら適用されない空域がわが国の首都圏を含む「1都9県」にわたって存在しているのである(高度は最大7000メートル)。
この空域のせいで、たとえば羽田~伊丹間などで本来の所要時間(燃料)を本来より大幅に超えざるをえないといった事例などが、著者のひとりである杉江弘さんによって別著などで報告されているが、オレから見れば「百害あって一理なし」の不法占拠だ。竹島だのどうのと騒ぐ一方で、この空域の占拠がある種のタブーのようになっているのはどうした次第なのだろうかと思う。
さて、3・45度。本書では、横田空域の高度との兼合いで設定された可能性を示唆している。
>つまりA滑走路への最終進入地点(降下地点)は3800フィート以上という条件があるため(米軍機はその下を飛行)、結果的に3・45度の降下角になったというのです。
そもそも進入チャートで表示する降下角は3・0度とか3・2度というように小数点以下10分の1単位で表示されるものなので、今回の3・45度という細かい表示は極めて異例なことです。なぜ、そのようなことをしているのでしょう。
それは滑走路端からFAF(*最終進入地点:引用者注)へと線を引いた結果であると考えています。仮に3・5度で引くと、今度はFAFの高度が、たとえば3840フィートというように半端な数字となり、これもチャートで使用できなくなります。それに対応した苦肉の策として、世界で初めての使用となる3・45度という降下角に(以下略。56~57ページ)
長々と引用させていただいたが、ウソとデララメ、理不尽などもろもろネガティブな政策によって、羽田の危険空港化が進められているということのようだ(ついでに、本件を含むもろもろの悪政推進に東京五輪が利用されているが、「新型コロナウィルス」だって利用されないとは限らないぞ)。
本書第4章の大見出しは「羽田は世界一着陸が難しい空港になる」。今回のブログではかつて高難易度として知られた「香港アプローチ」にちなみ「羽田アプローチ」なる造語を用いてみたが、信頼できる専門家である著者も類似の連想をしたのだなと思った(テンジンルクラ空港などもっと難しそうな空港があるだろうなどという揚げ足取りは論外というものだろう)。
個人的に興味を抱いてきたテーマということもあり、ついつい長々と駄文を連ねてしまったが、ぜひいまだからこそお手に取っていただきたい1冊であることは間違いない。値段は犬糞税込みでわずか1100円である。
それにしても、こんなデタラメな政策によって、万が一にも重大事故が起きたとしても、役人やら政治家はだれひとりとして責任を取らされないのがニッポンという国なんだろうなァ……。
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