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2015.03.09

冬のソナタまつり・・・の巻

Sarabahk01

「旅と鉄道」(朝日新聞出版)4月号増刊「さらば、北斗星  さらば、ブルートレイン」が発売になりました。
  今回は、記事寄稿のほか裏方にも関わらせていただき、自分なりの「寝台列車追悼」の儀式とすることもできたような気がしています。なにしろ、鉄道でもっとも愛着があるのがほかならぬ寝台列車。今週末以降はわずかな臨時列車と急行「はまなす」(青森~札幌間)、「サンライズエクスプレス」(東京〜出雲市・高松間)のみとなってしまうのだから、正直寂しい(「ななつ星」のような“遊び”は残るが、あれはイベントであって生活や日常の舞台としての鉄道の乗り物ではない。いわば遊園地の汽車ぽっぽの類でありましょう。それはそれでそれなりに楽しいとは思うが……)。

  去るものは追わず……。
  そんなモットーはともかくやりきれない気持ちにもなるけれど、つまりはそういう気持ちで製作に関わらせていただいた次第。書店等でお見かけのさいには、お手にとっていただければ幸いでありますm(__)m

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  話かわりますけど。あるィ夜、なにげにネットショップを散歩していたところ、このバレンボイム演奏のベートーベン・ピアノソナタ全曲DVDを発見。すでに発売されているブルーレイ版の焼き直しとのことだが、わが家には対応プレイヤーがないのでDVDの発売はありがたい。
  で、発売日前のィ予約販売とのことで購入手続きをしたのがたしか昨年10月。ちょうどドイツ散歩のさなかに自宅に届く手はずだったので、帰国したらのんびり聞くべぇと思っていたところ、「発売延期」の明け暮れ。帰国後どころか年を越してなお「発売延期」が繰り返されたのだからなにをかいわんやではないか。「こりゃボツかねぇ?」と半ば呆れ返っていたら、2月7日だかなんだかに「ひょっこり」届いたワケだったのだが……。

  演奏は素晴らしい。ベートーベンに忠実で、かつ歌が美しい。フレーズの呼吸やデュナーミクなど、教わることも多い(恐れ多い言い種だが)。が〜。映像づくりのセンスのなさには絶望させられてしまった。これならわっざわざ映像つきにしないでCDでじっくりと聞けばいいだけ。ひとことでいえば、見る者の気持ちをわざと逆撫でするがごとしの奇怪なコンテであり仕上がりなのである(演奏者の趣味でないと信じたい)。

  ここに、『出版奈落の断末魔  エロ漫画の黄金時代』(塩山芳明著・アストラ刊。当ブログに登場するのは2度目だが)がある。現役のエロ漫画編集長(編集プロダクション社長)が出版界の“奈落”を語るこの本は、紛れもない名著。わが枕元の仲間入りをして久しいのだが、このなかでマンガ原稿づくりの手抜き技の基本(?)が紹介されている。すなわち、コピー(人物や背景)の雨あられや旧原稿の切り貼りなどで、実際にその手合いは珍しくもないらしい。そのなかのひとつに「アップ!!  アップ!!  アップ!!」というのがある。ちょっと引用すると……。

とにかくでかく描く。吹き出しでも、人物でも、顔でも(中略)コマ一杯に描く。そうすれば背景入れる必要はないし(以下略)。>

  そう言われれば思い当たるフシはある。マンガ以外でも、大韓ドラマ、とくにちょっと古めの時代劇(「大祚栄」や「大祖王建」あたり)のコンテがほぼそんな感じではないか。とにかく人物のアップばっかで、せっかく大金をかけてつくった野外撮影セット場の出番もホントに少ないという有り様(日本のテレビ放映がカットだらけということもあるが、大韓滞在中にみたらそう変わりはなかった)。個人的に「映像つきラジオドラマ」と呼んでいたが。

『エロ漫画の黄金時代』によれば、「これの最大の被害者はやはり読者」(ドラマの場合は視聴者だが)。すなわち、
<エロ漫画の基本は、①どんな身分の姉ちゃんが、②どんなスケベ野郎に、③どこで(中略)……を、読者にビジュアルで伝えること>(本書124ページ)
  であり、「アップアップ」だと「すべての点で落第」(同)というワケだ。で、このバレンボイムのDVDの「絵」というのが、まさにそのy点で失格な「アップアップ」のオンパレードなのである。

  そもそも、演奏会場でライブを楽しむのならばともかく、自宅で映像つきで楽しみたいというのであれば、見どころはなんといっても演奏家の華麗なるテクニック、そのビジュアルとしての手さばきにあろう(ロックバンドなどのライブだってギターの早弾きが見せ場のひとつだったりするし、クラシック音楽にしても奏者のテクニックを楽しませるのは伝統だ)。このバレンボイムのDVDはピアノソナタを弾いているのだから、やはりその手元を見たい。全体的な「ヒキ」ももちろんほしいし、演奏者のちょっとした表情や仕種だってほしい。が、鍵盤上を走るその手や指が傍役というのは、まずありえないハズだ。言い換えると、この盤はまずその点においてまったくの失格なのである。
  たとえば、有名な「月光」ソナタ、その第1楽章は一切手元が映されておらず、ヒキ絵のママ終わってしまった。別の曲(最後のピアノソナタとなった第32番1楽章など)では顔のアップばかりというのもあった。手元が移される数少ないカットにしても、アップになりすぎているがために却ってそのディティールが殺されてしまっている。酷い……。

  が〜。演奏そのものは大いに気に入ったので、別の楽しみかたをすることにした。提供された映像は落第だからほとんどないものとし、手持ちの楽譜を引っぱり出して映像の代わりに仕立て上げたのである。おかげで、聞くだけではやり過ごしてしまいそうな細かいニュアンスなどが「ビジュアル」を通してココロにしみ入ってきて、いろいろと発見することもできた次第。しかし、コレならCDがあれば十分ですね(笑)。

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  ベートーベンのピアノソナタ(全32曲)は、それぞれ素晴らしい曲だが、もちろん個人的な好みからすれば立場はさまざま。いまさらながらに「すごいな」と感銘を受けたのは、終楽章のいくつかである。第1楽章はいくつかの例外を除けば「ソナタ形式」で書かれているが、そこで用いられている動機はソナタ形式にふさわしくメカニックなものが目立つ。動機として明解なのだ。それと比べると終楽章のいくつかはどうだろう。むしろ、どうやったらこういう主題が描きだされるのか、ちょっと不思議な思いにかられる曲もけっして少なくないなと思った(詳細は省くけど)。

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  さて、そんななか思い出したのが、「ぁあ、オレは15番(作品28。上画像はその冒頭部分)が大好きだったのだ」という他愛のないことであった。
  この曲には「田園」という表題が添えられているが、ショパンのそうした曲の大半がそうであるように、この表題はベートーベンによるものではないという。しかし、この曲に「田園」を結びつけたそのセンスは素直にわかるような気がするし、四半世紀以上前にはじめて聞いたときに淡い緑色を基調とした風景が思い浮かび、いままたそれと相似形をなす世界のトリコになったことを思えば、それが「田園」的ななにかだったとしてもイメージとの乖離はさほど感じない。

  この曲の第1楽章、第1テーマにつづく移行部の冒頭(40小節目)にたった4声からなる和音が打たれる(この曲は冒頭から4声で書かれ、ピアノ曲というよりは弦楽四重奏かなにかのようでもあるが)。和声学ふうにいえば「短七和音の第1転回形」で、スラーでくくられたつぎの和音も第1転回形になっているため、どこか不安定な響きだ。しかし、これは直前の小節でニ長調の完全終止の余韻が途切れないままに鳴らされる音であり、かつ低音部2声はニ長調のトニック(主和音)のママであるばかりか主音と第5音の完全5度ではないか。したがって、右手が担当する上2声が倚音のように聞き取れ、それがつぎの和音に解決したがっているというふうにも解釈できるかもしれない。それを裏づけるように、「第7音」である左手テノールの「ラ(主調の第5音)」は本来の解決をしないままつぎの和音とタイで結ばれている。
  ちょっとマニアックな話になってしまったが、あらためて聞いて、このふたつの和音がなんと効果的であろうかと長年にわたり思いつづけてきたのを思い出したのであった。じつは、この瞬間こそがこの曲でもっともメリメリするのであり、そういう感性はむかしと変わってないなぁとしみじみしてしまったのである。

  で、冒頭からここにいたる風景。時節柄、ここでは菜の花畑ということにするけれど、静かに波打つ菜の花畑にさんしら(断るのもヤボというか断らないと「?」という方が大半だと思うが、説明するのもアレなので下に動画を貼っておきMASITA。菜の花畑はありませんが)。ようはそういう心象風景なんですよ、コレ……というのを言いたかった(笑)。

▼L.V.Beethoven Op.28(問題の箇所は1分目あたりに)






▲たとえばこんな風景♪(とくに3分目ぐらい〜。ワケあってゴキゲンナナメなさんしらだが、きゃわゆいものはきゃわゆい。사랑이구나〜  しかも「日本版」でカットされた場面もみられまッスムニダ)

  ……っと、当初の心づもりでは、昨年後半に入手したショパンDVDの話につづける手はずだったが、すでに長々とやってしまったのでそれはまたの機会に。

  ぁあ……。関係ないけど、ただいま国外逃亡中にてごぢいます(゜゜;)(゜゜;)(゜゜;)  「田園」というか、目論みではいまごろ(なんだ、今日じゃないか)は菜の花まみれになっているハズなのだが、はたして……?

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